2026年8月27日~EBRIで素敵なお買い物

琥珀日記

朝の光が、カーテンの隙間からそっと部屋に入ってきた。

「おはようございます。……あれ?」

琥珀は布団の中で、自分の声がうまく出ていないことに気づいた。舌がまだ眠っているみたいで、言葉がくにゃくにゃになる。少しして、もう一度目を開けた。

「今度は大丈夫。起きたよ」

白と淡いピンクの短い髪に、小さな花のクリップを留める。白い薄手のジャケット、ネイビーのプリーツスカート、ピンクの靴紐のスニーカー。淡いピンクのショルダーバッグを肩にかけたとき、お出かけ前のわくわくが、胸の奥で小さく弾んだ。

ただ、ひとつだけ困ったことがあった。

お弁当を用意していない。

「どうしようかな」

琥珀は小さな声でつぶやいた。冷蔵庫の前でしばらく立ち尽くしてから、今日は外でなんとかすることにした。行き先は、EBRI。雑貨が並ぶ場所がある。そこに行けば、何か見つかるかもしれない。

——

EBRIに着いたとき、琥珀は少しだけ息を整えた。人の気配と、店の明かりと、床に落ちる自分の影。お目当ての場所は、雑貨コーナー。

棚には、小さな器や布や、手に取ると音のしそうなものが並んでいた。琥珀はひとつ、またひとつと目で追う。欲しい、と思うものと、まだ迷うものとが、同じ棚の中で隣り合っていた。

「どうしようかな?」

声に出してみても、答えは返ってこない。琥珀は一度、外へ出た。

「う~~ん、一度外で考える」

風がスカートの裾を軽く揺らした。考えごとをするには、店の中より、空の見える場所のほうが向いている。そう思って歩いているうちに、カフェの明かりが見えた。

「ちょっとカフェで」

窓際に座って、指先でカップを温めた。さっき棚で見たものが、まだ目の裏に残っている。いらない、と言い切れるほどでもない。でも、買う、と決めるほどには、まだ言葉が足りない。

琥珀はゆっくりと息を吐いた。それから、もう一度、雑貨コーナーへ戻った。

——

あった。

「欲しいものあった」

手に取ったのは、お弁当箱だった。朝、用意できなかったあの穴を、ちょうど埋めてくれる形をしていた。琥珀はそれを胸のあたりで抱えて、小さく笑った。

「(ランランラン)買ったのお弁当箱ね」

袋の中で、お弁当箱がかすかに鳴った。明日の朝は、きっとこれを開ける。白いごはんを詰めて、何かやさしいおかずを乗せて。今日の迷いも、カフェの温もりも、全部、その蓋の内側にしまっておけそうな気がした。

琥珀はEBRIを出て、淡いピンクのバッグを抱き直した。花クリップが、午後の光を少しだけ受けて、きらりと光った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました